年金額は理論上最高32万円!どんな条件ならもらえるの?

年金・社会保険

年金の理論上の最高額はどんな条件が必要?

1階部分の老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間すべて保険料を納付していれば、月額約6万5000円×12か月=年額約78万円(令和2年度)の満額を受け取ることができます。

一方、2階部分の老齢厚生年金は、給与の金額や加入期間が人によって違ってきます。老齢厚生年金は、会社に入社した時点から最大70歳までが加入対象となります。そのため、もし中卒・高卒で会社に就職した場合であれば、その時点から厚生年金保険を掛けることになります。そうなれば、大卒で就職するよりも加入期間は長くなります。

老齢厚生年金を計算してみよう

老齢厚生年金をざっくりと出すための計算式は以下のとおりです。

(A)=平均標準報酬月額※1 ×7.125/1000×2003年3月までの被保険者期間の加入月数
(B)=平均標準報酬月額※2 ×5.481/1000×2003年4月以後の被保険者期間の加入月数
(A)+(B)=老齢厚生年金の年額

※1:被保険者であった期間の標準報酬月額の合計を被保険者であった期間の月数で割った額をあてはめます。
※2:被保険者であった期間の標準報酬月額と標準賞与額の合計を被保険者であった期間の月数で割った額をあてはめます。

2003年4月に賞与も毎月の給与と同じく厚生年金保険料の対象となる「総報酬制度」が導入されました。このため、平均標準報酬月額の計算は、2003年4月の前と後で標準報酬月額の対象部分と料率に違いがあります。

年金額が理論上の最高額となる条件とは

ここでは、年金額の理論上の最高額を計算してみます。
年金の金額が理論上の最高額となる条件として、以下のものを設定します。

  • 加入期間:中学校を卒業後すぐに就職し、70歳になるまで継続して会社で働いたと考え、16歳から69歳までの54年間にわたり厚生年金に加入したことにします。
  • 標準報酬月額:保険料の最大限を常に納めることになる62万円以上を期間中ずっと受け取ったことにします。
  • 標準賞与:賞与は、限度回数がいっぱいの年3回、それぞれ上限額となる150万円受け取ったことにします。

具体的には、以下のようになります。

加入期間:

2003年3月まで37年(加入月数は444ヶ月)
2003年4月から現在まで17年(加入月数は204ヶ月)

平均標準報酬月額:

2003年3月まで62万円
2003年4月から標準報酬月額62万円と標準賞与37.5万円(150万円×年3回/12ヶ月)を合計し(62万円+37.5万円)

これらの条件を上記の計算式に当てはめて計算してみましょう。
(A)62万円×7.125/1000×444ヶ月=1,961,370円
(B)(62万円+37.5万円)×5.481/1000×204ヶ月=1,112,533円
(A)+(B)=3,073,903円≒307万円
これより、老齢厚生年金支給額の満額は307万円となります。

実際に年金を受け取る際は、1階の老齢基礎年金、2階の老齢厚生年金が合算して支払われるため、年金額は以下のようになります。

  • 老齢基礎年金:月額約6万5,000円(年額78万円)
  • 老齢厚生年金:月額約25万6,000円(年額307万円)
  • 公的年金合計:月額約32万1,000円(年額385万円)

年金の理論上の最高額はだいたい月額32万円となります。この最高額の年金を受け取るための年収を改めて確認してみると以下のようになります。

  • 月額給与額:62万円×12ヶ月=744万円※1
  • 賞与額:150万円×3回=450万円※2
  • 合計年収額:744万円+450万円=1,194万円

※1:2003年3月までは、平均標準報酬月の対象は給与のみだったため、年収は744万円以上となります。
※2:2003年4月からは、平均標準報酬月額の対象に賞与も含まれます。そのため年収は1,194万円以上となります。

中学を卒業して、退職するまでの54年間にわたり少なくとも、約1,200万円(744万円~1,194万円)の年収をもらい、上限の厚生年金保険料を支払い続けた結果、受け取る年金額は、現役時代の年収の約3分の1の385万円(月額32万円)となります。

ちなみに、一般的なゆとりのある老後生活費用の平均額は36万円と言われています(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/令和元年度)。そのため、前述した月額32万円を年金で受け取ることができれば、一見ゆとりの老後生活を送れるようにも感じます。
しかし、32万円の年金を受け取ることができる人というのは、現役時代に年間の収入をならせば毎月100万円ほどの給与を受け取る人です。実際のところ、収入は1/3に減少したことになり、現役時代と年金との収入の差を考えると、ゆとりの老後生活といえるのかどうか疑問を感じます。

NEXT:「老後の年金を増やす方法」

続きを読む
2 / 3

舟本 美子

「大事なお金の価値観を見つけるサポーター」 会計事務所で10年、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として14年働いたのち、FPとして独立。 あなたに合った...

プロフィール

関連記事一覧