NISAやiDeCo、亡くなったらどうなる?

NISAやiDeCo、亡くなったらどうなる?
マネーケア

iDeCoの資産は「死亡一時金」で受け取る

税制優遇の力を借りて、老後資金を堅実に用意できるiDeCoの資産は、原則として60歳までは引き出すことができません。そもそもiDeCoの税制優遇は、老後の資産形成を目的としているから受けられるものとなっているためです。しかしiDeCoの加入者が亡くなった場合は、遺族の方が死亡一時金を受給することができます。

iDeCoの死亡一時金は、事前に指定している死亡一時金受取人がいれば、その人が受給します。死亡一時金受取人の指定がない場合は、請求できる遺族の順位が定められています。具体的には、次のとおりです。

1位:配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)
2位:子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹であって、死亡時に主としてその収入によって生計を維持していた者
3位:2位以外で、死亡当時、主としてその収入によって生計を維持していた親族
4位:子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹であって、2位に該当しない者

同じ順位の人がいる場合は、上の記載の順番により順位が定められます。たとえば、子と父母がいる場合は、子が受け取ります。また、子が2人いるなど、同じ順位の人が複数いる場合、死亡一時金はその人数で等分して支給されます。

iDeCoの資産は、iDeCoで投資している投資信託などをそのまま受け取るのではなく、所定の日に売却して現金化したお金で一時金として受け取ります。運用の調子がいいときに売ることや、年金で受け取ることなどはできません。

また、iDeCoの死亡一時金は「みなし相続財産」として、法定相続人1人につき500万円まで非課税で受け取れます。NISAと違って、iDeCoには基礎控除とは別の非課税の枠があるので、相続税も抑えられます。

参考:JIS&T「給付金をお受け取りになる方」

iDeCoの資産は5年を過ぎると国庫に帰属してしまう

iDeCoの資産を死亡一時金として受け取るには、遺族からiDeCoの運営管理機関に「加入者等死亡届」、記録関連運営管理機関に「死亡一時金裁定請求書」を提出する必要があります。詳しくは、亡くなられた方が利用していたiDeCoの口座の金融機関に問い合わせて進めるのが確実です。

これらの手続きは、亡くなってから5年以内に必ず行うようにしましょう。というのも、亡くなってから5年以内に死亡一時金を請求しないと、相続人のいない相続財産とみなされ、国庫に帰属することになるからです。そうなる前に、必ず手続きをしましょう。

参考:iDeCo公式サイト「加入者の方へ」

家族にNISA・iDeCoをしていることを伝えておこう

NISA・iDeCoに加入している人が亡くなった場合の資産がどうなるか、お話ししてきました。NISAとiDeCoでは、亡くなった後の資産の扱いは異なります。しかし、どちらにも共通しているのは、遺族が手続きしないといけない、ということです。

しかし、そもそもNISAやiDeCoに加入していることを家族が知らなければ、NISAの「非課税口座開設者死亡届出書」を提出したり、iDeCoの死亡一時金の請求手続きをしたりしようとも思わないはずです。そうなると、遺族がもらえるはずのお金がもらえなかったということにもなりかねません。

NISA・iDeCoに加入している人は、あらかじめNISA・iDeCoに加入していることを家族などの身近な人に伝えておくといいでしょう。できれば、どの金融機関でNISAやiDeCoを利用しているのか、もしものときにはどうすればいいのかを添えて伝えておくと、よりスムーズでしょう。あの世にお金は持っていけないのですから、遺族に使ってもらった方がいいでしょう。

NISAもiDeCoも、税制優遇を受けながらお得にお金を増やせる制度です。もし亡くなるような事態があった場合、亡くなった本人はお金を使うことはできませんが、遺族がそのお金を引き継ぐことは可能です。その意味で、NISAやiDeCoを利用していても無駄になるようなことはありませんので、ご安心ください。

ただ、相続にあたってのルールや手続きは少々複雑ですので、実際に手続きをする際には、金融機関に問い合わせて進めるようにしましょう。

頼藤 太希

(株)Money&You代表取締役/マネーコンサルタント 中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。...

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