2022年10月よりiDeCoの加入要件が緩和。企業型DCと併用すべき?
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は老後の自分年金を作れる注目の制度です。2022年10月より、これまで事実上iDeCoに加入できなかった企業型DC(企業型確定拠出年金)の加入者でもiDeCoに加入しやすくなります。では、企業型DCとiDeCoは併用すべきなのでしょうか。今回は、2022年10月のiDeCoの制度改正の内容と、企業型DCと併用すべきかについて、お話します。
企業型DC加入者がiDeCoに加入しやすくなる!
2022年は、大きく分けて3つのポイントでiDeCoの制度が改正されます。
まずは4月、iDeCoの老齢給付金の受給開始年齢が「60歳から70歳まで」の10年間から「60歳から75歳まで」の15年間に拡大されました。実は同じタイミングで、国民年金・厚生年金の受給開始も75歳までに延長できる(繰下げ受給できる)ように。iDeCoの受給開始年齢も、それに合わせて改正されました。なお、iDeCoの資産は受給開始まで非課税で運用を続けることができます。
次いで5月、iDeCoに加入して掛金を出すことができる年齢が「60歳まで」から「65歳まで」に5年間延長になりました。60歳以降iDeCoに加入できるのは、会社員・公務員(国民年金の第2号被保険者)、国民年金の任意加入(国民年金保険料の納付済期間が40年に満たない場合に自ら国民年金に加入して、老後の年金額を増やすこと)をしている人のみという制限はあります。しかし、加入期間が5年間長くなるということは、長期・積立・分散投資を5年間長く続けられるということ。老後のお金を増やすチャンスが増えます。
そして10月からは、企業型DCに加入している人がiDeCoに加入しやすくなります。
実は、現状でも制度上は、企業型DCの加入者がiDeCoに加入することはできます。しかし、企業型DCの加入者がiDeCoに加入するには、労使合意による規約の定めと事業主掛金の上限の引下げが必要。そのため、実際には企業型DCの加入者でiDeCoにも加入できる人はごく一部の人だけだったのです。
2022年10月からは、そうした規約などの定めが不要になるため、企業型DCの加入者でもiDeCoに加入しやすくなるのです。
これまで事実上iDeCoに入れなかった企業型DCの加入者は約750万人ともいわれています。規約の問題などがなくなれば、より多くの人がiDeCoにも加入できるようになり、老後の備えを自助努力で充実させることができるようになります。
企業型DCとiDeCoを併用するときの掛金額は?
iDeCoの掛金額は、加入者の国民年金の種類や企業年金の有無によって異なります。具体的には、
自営業者・フリーランス・学生(第1号被保険者)…
月額6.8万円
会社員(第2号被保険者)…
企業年金なし 月額2.3万円
企業型DCのみ 月額2万円
確定給付企業年金(DB)あり 月額1.2万円
公務員(第2号被保険者)…
月額1.2万円
専業主婦(夫)など(第3号被保険者)…
月額2.3万円
となっています。
企業型DCとiDeCoを併用する場合も、掛金の上限があります。掛金の上限は、勤務先の企業年金が企業型DCのみか、確定給付型企業年金などほかの制度を併用しているかで異なります。
企業型DCとiDeCoを併用する場合の掛金の上限
(株)Money&You作成
会社の企業年金が企業型DCのみの場合、企業型DCの掛金額(事業主掛金額)の上限は月額5.5万円となっています。そして、iDeCoの掛金額(拠出限度額)は5.5万円から企業型DCの事業主掛金額を引いた金額で、上限は月額2万円となっています。つまり、企業型DCの事業主掛金額とiDeCoの掛金額の合計が月額5.5万円以下になるようにしなくてはならないのです。
たとえば、企業型DCの事業主掛金額が3万円の場合、5.5万円−3万円=2.5万円となりますが、iDeCoの掛金額の上限は2万円なので、iDeCoでは2万円までしか投資できない、というわけです。
会社の企業年金が企業型DCに加えて確定給付企業年金など、他の年金制度も導入している場合も、上限額こそ異なりますが企業型DCのみの場合と考え方は同じです。企業型DCの掛金額の上限は月額2.75万円までとなっています。また、iDeCoの掛金額は2.75万円から企業型DCの事業主掛金額を引いた金額で、上限は月額1.2万円です。そして、企業型DCの事業主掛金額とiDeCoの掛金額の合計が月額2.75万円以下になるようにしなくてはならないのです。
iDeCoの拠出金額に制限があるとはいえ、企業型DCに加えてiDeCoも利用することで、企業型DCのみ利用する場合よりも運用資金を増やすことができます。運用資金を増やせれば、その分老後の自分年金も多く貯められるようになりますし、投資先(投資信託など)の値上がりによる恩恵も大きく受けることができます。
また、iDeCoでは出した掛金は全額所得控除の対象になるため、毎年の所得税や住民税を減らす効果も得られます。たとえば、所得税率5%・住民税率10%の方がiDeCoで月2万円(年24万円)の掛金を出した場合、年3.6万円の節税ができることになります。仮に、35歳から65歳までの30年間この節税を続けたとしたら、節税額の合計は108万円にもなる計算ですから、所得控除の効果は大きなものがあります。
さらに、企業型DCの金融機関は会社が決めるため、自分が投資したい商品があったとしても投資できない可能性があります。しかし、iDeCoの金融機関は自分で決めることができます。お目当ての商品を扱っている金融機関を選んでiDeCoをスタートし、その商品に投資する、ということもできるようになります。
ですから、企業型DCとiDeCoはできるだけ併用するのがおすすめです。