「ペイオフ」初実施から10年 預金を守るにはどうしたらいい?

マネーケア

コロナ感染拡大を受けて、生活様式が一変しました。これからどうなるのか不安を感じている人も多いでしょう。この状況に加え、たとえば金融機関が破綻するような事態になったら、私たちの抱える不安は一層深刻なものになるでしょう。

かつて、日本でもペイオフが発動されたことがあります。私たちの生活に密着した「預金を守る」にはどうしたらいいのかを考えていきましょう。

そもそもペイオフとは?

2020年は、初のペイオフ実施から10年が経ちます。ペイオフとは、自分が預金している金融機関が破綻した際に、預金者に対し、預金保険機構から保険金を支払うことをいいます。このペイオフは、預金者保護の方法の一つです。

金融機関は顧客から預かった預金残高に対し、預金保険に加入し、万が一に備えて保険料を支払っています。もし、金融機関が破綻した場合には、金融機関ごとに預金者1人あたり元本1,000万円とその利子の相当する額までが保護される仕組みになっています。金融機関の破綻に預金者保護のため設けられた制度が、「預金保険制度」です。

ペイオフによって保護される対象は、預金の種類で異なっています。全額保護されるのは、決済用預金の当座預金、無利息の普通預金などです。無利息、要求払い、決済サービスを提供できるものである必要があります。

次に定額(元本1,000万円までとその利息等)が保護されるものとして、利息のつく普通預金、通知預金、納税準備預金、貯蓄預金、定期預金、定期積金、元本補てん契約のある金銭信託、保護預り専用の金融債、財形商品などがあります。同一の預金者が複数の口座を持っている場合には、「名寄せ」と呼ばれる集約、合算が行われた上で支払われます。

ペイオフで保護される対象


図:筆者作成

定額が保護される商品でも1,000万円超の部分や、外貨預金やその利息に対しては、その破綻した金融機関の財産状況に応じて、概算払いや精算払いが行われます。場合によっては預けた預金が一部カットされる可能性があり、預金者に損失が生じることがあります。

また、対象となる金融機関は、日本国内に本支店のある銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、信金中央金庫、農業協同組合、漁業協同組合などです。なお、政府系金融機関や上記の海外支店や外国銀行の在日支店は、対象外です。

ペイオフ導入のきっかけ

世界的に見ると、1929年に起こった世界恐慌の取付け騒ぎの教訓から、1934年に米国で連邦預金保険公社(FDIC)が創設されたのが始まりです。日本では、第2次世界大戦後の金融制度改革を経て、1971年4月1日から預金保険法が施行され、ペイオフが導入※1されました。

そこには、高度成長期とは違った経済成長に対応し、国際競争力を強化するために「金融の効率化」が必要という考え方がありました。そのため、銀行を破綻させないことで間接的に預金者を守る方針から、預金者保護と金融機関保護を分離させることにしたのです。
その後1986年に金融自由化、国際化を推進するために、現在と同じ環境が整備され、保護される金額も1000万円へ引上げられました。

ペイオフの制度そのものは、1971年からあったのですが、バブル経済がはじけた後は銀行の不良債権問題が深刻化し、「金融危機」と呼ばれる時期がありました。1997年には北海道拓殖銀行や山一證券が破綻しました。さらに1998年に長期信用銀行の2行が破綻するなど、時限措置として1996年6月から2001年3月までの間、ペイオフを凍結することになりました。
当時は社会不安も増大し、「銀行が大きすぎるので潰せない」という社会通念が崩壊して、いつどうなるか分からないという、世相が暗いものになっていました。

やがて大手銀行の不良債権問題が2004年度までに終息したことを受け、2005年からペイオフが全面解禁されました。
※1:横浜国立大学 経済学部 「ペイオフ発動の歴史的意義」

日本振興銀行破綻 そのとき預金はどうなった?

金融危機を脱して、新な平時に入った2010年9月に日本振興銀行が破綻※2し、日本で初めてのペイオフが行われました

日本振興銀行は、2004年に中小企業向けの貸付を主に、新規参入銀行として開業しました。
しかし、無理な経営から多額の不良債権や債務超過に陥ってしまったのです。

従来破綻処理としては、資金を援助する方式がとられていて、ペイオフが発動されたことはありませんでした。2010年9月10日金曜に破綻し、民事再生手続の申立てを行い、週末に預金口座の名寄せ作業が行われました。9月13日月曜には、預金の払戻し、融資業務を再開するという迅速な処理がされています。

この時、ペイオフの発動により、預金の支払いが一部カットされる可能性がある預金者は、全体の約3%の3,560人で、元本1,000万円と利子分を超える金額は100億円程度になったようです。資金量は小さいといえども、預金者に痛みが生じています。

のちに預金や資産の一部は、受け皿の銀行の第二日本承継銀行(預金保険機構の子会社)に譲渡され、不良資産は承継されず整理回収機構に譲渡されました。後に公募を経て、受け皿銀行はイオン銀行が選定されました。

このペイオフを発動する決断の背景には、2003年11月に起きた足利銀行以来の破綻で前例を問われにくいことや、資金量の少ない銀行であること、日本の金融システムでの預金取付けの波及懸念が小さいことが挙げられます。
また、日本振興銀行では、当座預金や普通預金などの決済性預金を扱っていないため、破綻しても他の金融機関に影響が少ないと考えられたようです。さらに、不良債権が多額に上る違法行為を行っていたことなどがあり、公的資金の投入する対象とはしにくい金融機関であったことなどがありました。

この日本振興銀行のペイオフについては、前向きの評価がなされています。私たちは預金とはいえ、預金者は自己責任の下に預け先や商品を選ぶ必要があることを再確認する必要があるといえるでしょう。この銀行の破綻事例をとおして、預金保険制度やペイオフへの一般の認知度も高まってきたと思います。
※2:JIJI.COM 「初のペイオフ発動」

ペイオフから預金を守るために個人ができること

金融危機の当時には、金融機関や保険会社が次々に破綻し、「ペイオフが起きたらどうしよう」とたいへん不安に感じたことを記憶しています。実際、保険会社によっては、保険金額の7割くらいまで保障額が下がってしまったケースもあります。筆者も何となく不安に感じ、ある保険会社が破綻する1か月前に解約して難を逃れたことがあります。

個人でも大切な預金を守るために、それなりの対策をとっておくことが大事です。

預ける金額と名寄せ

ペイオフに際しては、1つの金融機関で預金者1人あたり、元本1,000万円とその利息に対しては保護されるので、普通預金や定期預金は、1つの金融機関で1000万円までにしておくことがまず考えられます。多額の金額ならば、金融機関を分散して複数の預け先を検討しましょう。

注意しておきたいのが、名寄せについてです。もちろん名義が違えば夫婦、親子といえども、それぞれに保護されます。しかし、家族や親族の名義を借りただけにすぎない預金の場合には、保険の対象外になります。

さらに、個人で事業を営んでいる場合には、「個人用」と「事業用」とに名義を分けていたとしても、同一の預金者として名寄せされてしまいます。自己責任とはいえ、事業の継続ができなくなると困るので、事業資金を預ける金融機関も複数と取引するように心がけたほうがよいでしょう。

預金以外の商品を検討する

預金はローリスク、ローリターンだと思いがちですが、ペイオフになればそうではありません。リスクの分散という意味で、預金ではなく、有価証券で保有することを考えてみてはいかがでしょうか。株式投資とまではいかなくても、投資信託や国債も有価証券です。比較的安定した値動きの商品であれば、金額にこだわらずに預けておくことができます。

もちろん、預金保険制度の中には有価証券は含まれていませんが、金融機関の資産とは別に管理されているので、万が一金融機関が破綻しても、預金のように一部カットされることはありません

今後ペイオフが起こる可能性はあるのでしょうか?次のページでみていきましょう。

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池田 幸代

株式会社ブリエ 代表取締役 証券会社に勤務後、結婚。長年の土地問題を解決したいという思いから、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。不...

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