年金の受け取り方で損をする?! 年金受給はトータルで考えて

年金・社会保険

繰上げをした方がいいの?

とはいえ、筆者は住民税非課税世帯になるための繰上げはおすすめしません。
理由は2つです。

ひとつめは、制度や年金額が変わるからです。
2020年の公的年金等控除65歳以上の額は最低110万円ですが、2019年は120万円でした。控除額が減ったのです。これは、所得額の増加になります。
加えて、年金額の基準は2019年より上がりました。つまり、2019年に金額ぎりぎりで合わせて繰上げした人は、2020年は住民税非課税世帯になっていないということです。

ふたつめの理由は、遺族年金や障害年金とのからみがあるからです。
例えば、夫が長期間サラリーマンであった専業主婦が60歳で基礎年金を繰上げたとします。その後すぐに夫が亡くなると、65歳までは遺族厚生年金+中高齢寡婦加算を受け取ることができますが、その金額は基礎年金よりも高額になることが多いので、その場合は遺族厚生年金を受け取り、基礎年金は受給停止になって受け取れません(一人一年金の原則)。
妻が65歳以上になると基礎年金を受け取ることができますが、その金額は繰上げたために本来の額より減ることになります。
これでは、繰上げた意味がまったくありません。

もしどうしても、「繰上げ受給をしたほうがいい人を教えてほしい」と言われれば、お金が全くなくて年金しか頼るものがない人、または自分の余命が短いとわかっていて、今すぐお金が必要な人ぐらいでしょうか。

まとめ

年金制度は複雑です。
繰上げを考えるなら制度を理解している信頼できる専門家に、「自分のケースならどうなるか」を相談するべきだと思います。

小野 みゆき

中高年女性のお金のホームドクター 社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー・年金マスター・1級ファイナンシャル・プランニング技能士 企業で労務、健康・厚生...

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