2021年度は0.1%の引き下げ! 年金支給額はどう決まる?

2021年度は0.1%の引き下げ! 年金支給額はどう決まる?
マネーケア

2021年は新ルールにより0.1%減少

今年度の改定率は以下のように算出されています。

今年度の改定率:前年度の改定率1.001×調整分▲0.1%≒1.000

今回の▲0.1%の改定は、前述したルールの見直しが影響しています。
2020年度は賃金・物価上昇を受けて、改定率が1を上回り(1.001)、法定額を上回る年金額でした。
一方で、2021年度は前年度の年金額から▲0.1%され、4年ぶりの減額となりました。

[老齢基礎年金の満額月額は66円の減額]
老齢基礎年金の満額を2020年度と比較すると
2020年度780,900円×1.001=781,700円 ※月額65,141円
2021年度780,900円×1.000(▲0.1%)=780,900円 ※月額65,075円(▲66円)

今年度の年金額がどのように決定されたのかを順を追って確認していきましょう。
年金額決定フロー
図:筆者作成

まず、今年度の改定率の基準となるデータは、以下の通りとなりました。

・物価変動率→0.0%
・賃金変動率→▲0.1%

物価(±0.0%)>賃金(▲0.1%)ですから賃金指数が物価指数を下回っていますね。
年金額の改定は、名目手取り賃金変動率(▲0.1%)がマイナスで、賃金変動率(▲0.1%)が物価変動率(±0%)を下回る場合、年金を受給し始める際の年金額(新規裁定者)、受給中の年金額(既裁定者)ともに賃金変動率(▲0.1%)を用います。
昨年度までの例外ルールがもし適用されていたなら、物価変動率(±0%)の方が採用されるため、「改定なし」となるところ、今年度からは例外ルールは適用されず基本ルールを徹底したために2021年度の年金額は、新規裁定年金・既裁定年金ともに、賃金変動率(▲0.1%)によって改定されているのです。

そして、賃金や物価による改定率がマイナスの場合には、マクロ経済スライドによる調整は行わないこととされているため、2021年度の年金額改定においては、マクロ経済スライドによる調整は行われませんでした。結果、マクロ経済スライドの未調整分(▲0.1%)は翌年度以降に繰り越されることになりました。

実質賃金の押し下げ傾向なので、年金額は減る可能性が高い

これから短時間労働者の適用拡大が進み、実質賃金の押し下げ傾向が続くと考えると、今後も「物価>賃金」基調で推移する可能性が高いです。つまり、今後は物価が上昇したとしても賃金が下がっていれば年金額は減るということです。
今回の年金支給額の減額は、ネガティブに捉えがちですが、むしろ将来まで安心な年金制度を持続するための必要な調整だと考えれば少しは納得が行くのではないでしょうか。

改定ルールの見直しについても「今までは受給者の生活に重点を置いていたけれども、今後は現役世代の皆さんの将来の給付を確保することに重点を置きますね」という政府からの力強いメッセージともとれます。
年金支給額の減額という結果だけにとらわれることなく、その背景までを理解していくことが今後もますます大切になってくることでしょう。

KIWI

ファイナンシャルプランナー・社会保険労務士 長年、金融機関に在籍していた経験を活かし、個人のキャリアプラン、ライフプランありきのお金の相談を得意とする。 プ...

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