【Z世代のマネー学】米国株の配当金には税金が二重でかかる? 税金を減らすにはどうしたらいい?
最近、若い世代の方々を中心に話題になっている「FIRE」。「Financial Independence, Retire Early」の略で、「経済的自由と早期リタイア」といった意味があります。FIREでは、投資で得た利益(不労所得)で生活し、仕事を早めに退職することを目指します。
FIRE実現のために注目されているのが米国株。ですが、日本で米国株に投資すると、米国と日本の両方で税金がかかる「二重課税」になってしまう場合があります。
そこで今回は、株の利益の課税のしくみと、税金を減らす方法を紹介します。
前回:毎日積立VS毎月積立、有利なのはどっち?検証してみよう
株にかかる税金、日本と米国の違い
株で得られた利益には税金がかかります。日本株はもちろんですが、米国株も例外ではありません。日本に住んでいる方が米国株で利益(売却益・配当金)を得た場合、日本では売却益・配当金それぞれに20.315%の税金がかかります。加えて、米国でも配当金に10%の税金がかかります。
●米国株投資の利益にかかる税金の税率
表:筆者作成
つまり、米国株の配当金については、日本と米国の両方で税金がかかってしまうのです。これを二重課税といいます。
では、仮に税引前10万円の配当金を受け取った場合、かかる税金はいくらになるでしょうか。
●税引前の配当金10万円にかかる税金は?
図:筆者作成
①税引前の配当金10万円から、米国の税金が引かれる
10万円-(10万円×10%)=9万円
②9万円から日本の税金が引かれる
9万円-(9万円×20.315%)=7万1716円
③手取りの金額は7万1716円(税額2万8284円)
このように、10万円の配当金にかかる税額は約2万8000円。手取りは7万2000円ほどになってしまうのです。
「外国税額控除」で二重課税を防げる
米国株の配当金への二重課税を防ぐために使えるのが、「外国税額控除」という制度。
外国税額控除は、確定申告によって、外国で支払った税額を所得税や住民税から差し引ける制度です。
外国税額控除を行うと、まず税引前の配当金から日本の税金分を計算し、本来の税額を算出します。次に、支払った米国の税金から、税額の差額にあたる金額が還付されます。つまり、確定申告を行い、外国税額控除を適用することで、二重課税状態をなくすことができるというわけです。
●外国税額控除で配当金にかかる税額はどうなる?
図:筆者作成
①税引前の配当金10万円から、日本の税金が計算される
10万円-(10万円×20.315%)=7万9685円
②米国の税金から税額の差額が還付される(この場合、7969円)
③手取りの金額は7万9685円(税額2万315円)
確定申告前は上で紹介したとおりで、税額が約2万8000円でした。しかし、確定申告を行うと、二重課税の場合の税額と日本だけの場合の税額が計算されて、差額分が還付されるのです。つまり、この場合は手取りが約8万円となるわけです。
ただし、還付される税金はあくまで自分が支払った所得税・住民税。米国で支払った10%の税金がそのまま戻ってくるわけではありません。ですから、納める所得税・住民税が少ない場合は、全額が還付されない場合もあることにはご注意ください。
確定申告をしておくと、損益通算や繰越控除も利用できます。
損益通算とは、利益と損失を相殺して、課税される所得を減らす制度。米国株の利益・損失は、日本株や外国株、投資信託、債券などの利益・損失と損益通算できます。
たとえば、米国株で50万円の利益がある一方で、日本株で100万円の損失があったという場合、損益通算で利益と損失を差し引きすると50万円の損失ですから、税金を払う必要がなくなります。
また繰越控除とは、損失を最大3年間にわたって繰り越しておくことで、翌年以降に出た利益にかかる税金を減らす(なくす)ことができる制度です。
たとえば上で紹介した損益通算を行なって、50万円の損失を繰り越しているとします。このとき、翌年に投資信託で50万円の利益が出たとすると、この50万円の利益と昨年の50万円の損失を損益通算して相殺し、税金を払う必要をなくすことができるのです。
米国株に限った話ではありませんが、特に投資で損失が出た場合には、確定申告をしておいて、損益通算や繰越控除の手続きをしておくといいでしょう。
続いて、一般NISAを使った場合を見てみましょう。