マイナス金利政策から3年、私たちの暮らしはどうなった?

マネーケア

 政策の導入発表当時、マスコミで「マイナス金利」というワードが取沙汰され、金融リテラシーをこれから身につけていく層である読者の皆さんは、「わたしたちの銀行預金に、マイナスの金利が付くのか」と、思われた方もいるでしょう。
マイナス金利政策から3年が経ちましたが、私たちの暮らしはどう変わったでしょうか。

【マイナス金利政策とは】

マイナス金利は政府の金利政策ですが、私たちが普段利用している民間の銀行預金金利を、直接上げろとか下げろとか、指図はしません。政策でコントロールするのは、私たちが普段利用している銀行など金融機関の「親分」といってもいい、「中央銀行(日本では日本銀行)」の金利です。

金融機関は一定のお金を日本銀行(日銀)に預けていて、その口座に預けられているお金の一部にマイナスの金利をつける政策をマイナス金利政策というのです。直近の日本では2016年1月に、現在の日銀総裁である黒田氏の発表により、市場がざわついたのを筆者も鮮明に覚えています。

金融機関が日銀にお金を預けるより、市場に流出させてたくさんの人が融資を受ける事により、経済を活発化させようとする狙いです。

【暮らしにあたえた影響は】

その後、皆さんは何か変化を感じましたか?

その前からのアベノミクス政策により、活発になった株式市場、上がった日経平均が一時期下落傾向にあったところ、マイナス金利政策発動後、上昇し戻しました。
テレビなどで国民の「肌感覚」をインタビューした企画はいくつかありましたね。まず首都圏の大手企業で働く人のボーナスが上がり、その後1年以上時間を空けて、地方都市にもようやく「忙しい、人手不足だ」という声が聞こえるようになったと筆者は感じます。

海外旅行に行く読者は、為替を敏感に感じたかもしれません。マイナス金利政策以降、それまで100円を切る円高に慣れていた相場が、100円台を回復し、最近は110円前後で推移しています。海外旅行好きの人にはマイナスな話しですが、この水準は日本企業にとって「安すぎでもなく、高すぎでもない」ちょうどよい為替水準、といっていいでしょう。

日本の経済構造は、特に製造業では下請け企業が多いので、輸出割合の大きい大企業がこれまでより円安になれば利益が安定し、時間差をおいてでも、下請けの中小企業にもよい影響をもたらす結果になった事が見て取れます。

【今後の見通し】

マイナス金利政策は欧州でも広く実行されています。しかし日本を含むその多くの国は、特段個人消費が増えたかというと、そのようには見受けられません。筆者の周辺でも熱しているのは不動産業界ぐらいで、今後、銀行の融資基準が厳しくなれば、その熱が一気に冷めるほうの副作用を予期したいところです。

しかし読者世代のような顧客を、多く持つ筆者が感じるプラス面もあります。それまで「銀行にお金を預ける」ことしかお金の置き場を考えた事がなかった人が、マイナス金利政策後、「お金を置いておくだけではなく、運用しよう」と、積極的に相談に来られるようになった事です。
たとえ政策の副作用があったとしても、アップダウンがあるのが金融経済です。日本の政策は政府にまかせて、自分の○○年計画を策して、行動する勇気を持ちましょう。

【まとめ】

マイナス金利政策の是非を考えなくても、政策を期に、お金や経済についてもっと、ごく普通の人が考え行動する事で、社会や自身の将来に一矢報いることが出来るかもしれません。

読者の皆さんもこの3年で、周囲が、自分が、どのように変化したのか一度、振り返ってみてくださいね

佐々木 愛子

ファイナンシャルプランナー(AFP)、証券外務員Ⅰ種 国内外の保険会社で8年以上営業、証券IFAを経験後、リーマンショック後の超低金利時代、リテール営業を中...

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